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サッカーで視覚障がい者と健常者が混ざりあう社会を目指します

松崎 英吾 /  Eigo Matsuzaki ( 第2期 )
ブラインドサッカーユニバーサル事業/日本ブラインドサッカー協会  

事業概要

●事業の内容
 このブラインドサッカー・ユニバーサル事業では、2つの事業を軸としています。一つは「スポ育」と呼んでいる小学校〜高校生にかけたいわゆる出張授業による教育プログラムの提供。もう一つは、企業研修です。

●スポ育プロジェクト
 継続的な体験機会の創出のために、2010年9月からスポ育プロジェクトをスタートしました。単純に言えば学校とスポーツ少年団を対象とした出張授業です。
 ニーズ重視のプログラム
 これまでもブラインドサッカーの出張授業は年間50件程度実施してきていました。しかし、そこでの観点は「ブラインドサッカーを知ってほしい」という一方通行のものでした。スポ育とあえて名前を変え実施にいたったのは、学校や子どもたちのニーズをしっかりととらえようと言う意図によります。
 具体的には小学校4年生〜6年生の学習単元にあわせて、5つの学び(障がい者理解、ボランティア精神/チームワーク/コミュニケーション/個性の尊重)を提供するプログラムとして展開しています。
 学校のニーズに即すことで、「押し売り」な体験から、一つの体験学習から国語、社会、総合学習、調べ学習、体育の観点から学び、気づきを得られるプログラムとなり、学校との継続的な関係作りの根っことなっています。

●企業研修
 子どもたちへの教育プログラムのノウハウ、スキルが観点を変えることで企業研修としてニーズがあることが少しずつわかってきており、推進しています。
 これまでの実施やヒアリングから、企業のニーズとしては「コミュニケーション研修」「ダイバーシティ研修」「ホスピタリティ研修」にあり、対象としても新入社員からラインマネジャー、シニアマネジャーまで幅広く承り実施をはじめております。

●障害者雇用も生み出す
 この事業の特徴は、障がい者とまざること。そのため、プログラムの実施には障がい者が不可欠です。プログラム実施にあたり障がい者雇用を産み出すことも大きな目的です。

 

事業を始めたきっかけ

2002年、生意気でサッカーがちょっと好き、障がい者に心のバリアをばっちりもった「ふつうな」大学3年生の私がブラインドサッカーに出会いました。今から考えると「へた」なブラインドサッカーでしたが、私は見るや驚き、思わず「すげぇ」と口にしたことを覚えています。そして、活動を下支えして以来、多くの私のような「ふつうな」人たちが「すげぇ」を口にし、ブラインドサッカーを通じて障がい者観が覆っていく様子を目の当たりにしてきました。
 障害と出会うこと。それは親が老いることと同じでいつかどこかで出会うものだと思います。そのときに、「障がい者っていやだな」「どうしていいかわからない」となるのかは、障がいをみる見方、マインドセットにあると思っています。
 私は、ブラインドサッカーが最良な障がい者理解のツールだと考え、これをきっかけに障がい者全般に対する一人ひとり、そして社会のマインドセットを変えていきたいと思っています。
 今回の事業は、その具現化となるものです。小学校に入ったら、卒業するまでに障がい者観が覆る原体験をする(それはブラインドサッカーを体験する、でもあり、他の障害者スポーツも巻き込める余地があることも踏まえています)。
 同時に、そもそも本事業で伝えたいことは、実は多くの「ふつうの」スポーツでも得られる気づきや体験でもあります。しかし、私たちは「五体満足」ゆえに、コミュニケーション、ダイバーシティ、チームワークに気づきにくいのです。それが、ハンディを通じてるからこそ、気づきやすい、わかりやすい、腑に落ちやすいことがたくさんある。
 もし、ブラインドサッカーでスポーツが本来持っている力をより感じやすく伝わりやすくすることができなら、スポーツはもっと社会に役立つものとなると実感しています。ブラインドサッカーが障がい者の世界でのみならず、スポーツの世界においても、社会に輝きを与えられる存在になれるようにしていきたいと考えています。

ひとことメッセージ

この事業の根幹はブラインドサッカーという障がい者スポーツです。このスポーツを通じて視覚障害者やここに関わる人たちに生きがいをもつことに寄与し、障がい者と健常者が当たり前にまざる社会に貢献することが私たちのミッションとビジョンです。

私は、最も障がい者スポーツから縁遠かった一人と自認しています。「サッカー大好き!」「障がい者に理解のあった人」、いずれでもなかった私ですら、ここに生きがいをもち、障がい者とまざっていきており、そのなかでダイバーシティ(個性の違うもの同士が混ざりあい、チームワークを発揮してイノベーティブな場を生み出す)の魅力を実感しています。

その理由は、このスポーツのもつ低い敷居、広い間口にあるのだと思っています。障がい者と携わりがなくても、障がい者に偏見をもっていても、体をいっしょに動かす中で、サッカーを通じて障がい者を感じることができる。

机上ではないそんな機会を、全ての子どもたちに持ってほしい。全ての子どもたちが、ブラインドサッカー(将来的にはさまざまなスポーツ)で、「目から鱗」の体験をする。障がい者の見方が変わり、街でまざって過ごしていける。そんな社会をスポーツのとびっきりポジティブな側面からアプローチし、結果としてブラインドサッカー自体が社会で認められ、活動基盤ができていくような事業にしたいと考えています。

 

活動レポート

 

メディア掲載

目隠しの向こう側に、見えるものがある。ブラインドサッカーが教えてくれること。(greenz.jp、2011年7月15日)

 

【事業カテゴリ】
2期生スポーツ教育・こどもの健全育成

【団体名/事業名】
ブラインドサッカーユニバーサル事業/日本ブラインドサッカー協会

【活動地域】
首都圏を中心として全国

【ウェブサイト】
http://www.b-soccer.jp/

【ブログ】
http://blog.jplayers.jp/b-soccer/

【プロフィール】
日本ブラインドサッカー協会事務局長。国際基督教大学卒。学生時代に、偶然に出会ったブラインドサッカーに衝撃を受け深く関わるようになる。大学卒業後は、出版社に勤務。一般企業での業務の傍らブラインドサッカーの手伝いを続けていたが、「ブラインドサッカーを通じて社会を変えたい」との想いで退社。その後、日本視覚障害者サッカー協会(現・日本ブラインドサッカー協会)の事務局長に就任。「サッカーで混ざる」をビジョンに掲げる。サステナビリティをもった障害者スポーツ組織の経営を目指し、事業型非営利スポーツ組織を目指す。

【影響を受けたもの】
ブラインドサッカー。関わる人たち、スポーツの魅力に大きな影響を受けました。

【座右の銘】
満足は後退の始まり。浪人時代に友人から頂戴した言葉です。

【オフの過ごし方】
ブラインドサッカー