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就労に向けた、難民による多文化サービス: emic

吉山 昌 /  Masaru Yoshiyama ( 第3期 )
合同会社emic (設立準備中)  

事業概要

日本にも、迫害から逃れた難民が保護を求めて入国して居住しているが、言語的な障害や、日本社会側の理解の少なさもあり、高いスキルを有した難民がふさわしい就業をできず、貧困に置かれている。また、欧米に比べると在日難民数が少ないことから、日本社会において難民問題が十分に認識されているとは言い難い。
このような状況に対して、難民が収入を得られ、またその能力の高さを社会に示せる機会を作ることを目指している。具体的には、各国出身の難民が文化もしくは語学を日本人に教える場を作ることにより、難民自身にとって収入の獲得と、教える経験を通じた日本人との関係構築と言語能力の向上につなげ、同時に日本人が能力・知見向上という直接的なメリット+多文化社会への意識の向上を得られるようにする。付随的に、職業紹介や派遣により、教育以外の就労の機会も開拓し、一般社会での難民受け入れの間口を広げていく。これは、将来の日本社会での移民受け入れにも役立つ経験となると考えている。

具体的には、以下の事業を進めている/計画している:
事業①:多文化事業 → サービス=各難民の文化(例:料理)、本国情報(例:ビジネス習慣)、母語などを中心に、難民を講師とした講座を実施。当面の講師のスキル制約も考慮し、語学よりは文化を重視した内容を先行して実施。提供価値=各地域に関心(ビジネスや観光、食、研究など)ある人にとって、国内にいながら現地のリアルな情報を得られる。加えて、事業者にとっては今後の国際的な取引に関して活用できる人材と出会える可能性がある。また、マイナー言語学習者にとっては数少ない、語学を活用できる場。難民にとっては、収入の獲得と、講座の場での日本人顧客とのコミュニケーションを通じた日本語能力の向上、ある程度外国人への関心・寛容度のある日本人との関係構築、および接し方を学ぶことが可能となる。また、セミナーだけでなく、弁当などの実物販売も今後展開予定。
事業②:人材紹介・派遣(将来) → 難民をスキルに応じて紹介・派遣し、採用側からフィーを受領。もともと日本語能力の高い難民や、①でスキルを上げた難民を中心に、各国についての知見や国際的な経験がある人材を必要としている事業者に紹介もしくは派遣することを想定。

 

事業を始めたきっかけ

大学時代のアムネスティでの難民支援活動以来、難民との出会いにおいて、不幸な状況に何度も出会ってきた。一方で活発な活動を行い人々に感銘を与えるような難民にも出会ってきた。ここから、難民たちが日本社会の中で就労機会を得られ、地域コミュニティとのつながりを得られる事の重要性を強く実感した。これは単に精神的な問題ではなく、日々の生活の糧が不足している難民にとって、切迫した実際的な問題でもある。

多くの場合、日本語等が問題となり、如何に優秀な難民でも、就労に対してハードルがある現状がある。一方で、1人ひとりの難民と話をする中で、現在は就労機会を得られているが、過去の経験などによるスキルとのギャップが大きく、ステップアップにつながる事を切望する人々も多くいる事を認識した。そこで、貧困に置かれている一人一人の難民に少しでも収入を得られるような機会を提供する事と、同時に難民の「力」を社会に伝えらる事を実現したいと考え、その一つの方法として当事業を立ちあげた。

ひとことメッセージ

日本国内の難民問題は一見マイナーなテーマで、また厳しい状況に置かれている方も多い事から精神的にも辛い事が多いですが、一方で、世界から来ている多様なキャラクターの人々と共に、事業構築という厳しいテーマに臨む事ができます。また、海外へ出る事を考えている方、企業も、日本にいながら、多様性ある市場について知る事ができます。日々、新鮮な気持ちで事業を進めています。多くの方とこの多様性をぶつける事で、あらたなケミストリーを産みたいと思っています。ぜひ、応援下さい。一緒にコラボレーションしましょう。

 

活動レポート

emicでは、セミナー事業や語学関連など、難民の文化を活かした事業を開発することを通して、難民の雇用機会を生み出そうとしてきました。

現在は、すでに協力企業が存在し、かつ能力のある難民も存在している弁当事業を実現できないか、トライを続けています。様々なスキルと就労上のニーズを有する難民がいる中で、比較的(あくまで比較的)ハードルが低いのが、この領域です。まずは、限りあるリソースの配分として、まずニーズの強い難民がつながりやすい領域に注力しました。ただし、必要とする収入水準を実現するためには現在見込まれている以上の売上げが必要なため、事業拡大のための方策を協業先と共に検討中です。その方向性が見えた先には、もう一人、二人の難民の雇用を生みだしていきます。

なお、まずは長期間かからずに収入創造が実現可能と思われる上記事業を進めますが、この先は個人ベースでスキルのある難民を対象としたセミナーや翻訳などの市場開拓を続け、併せて数名以上の難民雇用を同時に実現できるような事業領域を探していきます。

--------------------------------------------【2012/02】

8月は、毎週鎌倉や都心にてワークショップを開催していました。しかしながら、機材や運搬などの負担が大きいためプランを軌道修正をしました。「つくるひと」を増やすという視点にもう一度立ち返り、半年の活動を経て感じたことは、地域に密着したコミュニティーラボとしての機能を強化していくことでした。そのため、一般公開日を土曜日から金曜日に変更しました。勇気のいる決断だったのですが、その後不思議なことに観光客ではなく、リタイアしたご夫妻やフリーランスのデザイナーやアーティストなど、地域に根付いた方々が訪れはじめています。さらに、滞在型のレジデンス施設が求められ、こうした長期的なプロジェクトをたのしく整備したいと思っていた矢先、古い民家の一室を提供してくださる方が現れました。このような現象自体がとても重要であり、古民家、陶芸教室、和紙、家具職人など年代や専門領域を超えてスキルのある人々と出逢える場所になっています。地域住民が「ものづくり選手」になれるようなプログラムを実施していき、都心と鎌倉を結びつけプロクリエイターの創造性を刺激しながら、彼らの特技を活かして「ものづくり教師」として活動展開できるプログラムを準備をしている。

--------------------------------------------【2011/11】

難民の特技、特性を元に就労を実現しようという当プロジェクト。これまで、難民自身や、難民支援団体との議論、および語学などのニーズがありそうな見込み顧客へのヒアリングなどを実施してきた。その結果、まずは語学講座や文化講座を、領域を絞った上でトライアルを行うことを予定している。また、かれらの特技を活かせるような形での法人に対するサービス提供を検討中である。

--------------------------------------------【2011/08】

【事業カテゴリ】
3期生人権・平和就職・就労支援・キャリア教育

【団体名/事業名】
合同会社emic (設立準備中)

【活動地域】
東京

【プロフィール】
大学時代にアムネスティ・インターナショナル(大阪事務所)において難民支援活動に関わり、1999年に主に東京・大阪のアムネスティメンバーと共にNPO法人難民支援協会を設立。その後、同協会理事として継続的に難民支援にかかわる。また、経営コンサルティング会社に就職し、経営戦略から調達まで幅広く企業経営支援に携わる。2011年6月より、同協会事務局次長。また、難民の起業を支援する一般社団法人難民マイクロファイナンスの理事も務める。当事業は、難民支援協会の関連事業として設立した。

【影響を受けたもの】
両親。高校生時代の障害者自立生活センターでの様々な出会い。そして、大学時代の難民との出会い。

【座右の銘】
(特になし)

【オフの過ごし方】
旅行、観劇(歌舞伎、小劇場)