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卒業後の社会的弱者を生み出してしまうことを予防する高校教育支援事業

今井 紀明 /  Noriaki Imai ( 第3期 )
NPO法人 D×P(法人化申請中)  

事業概要

ミッション:「若者が自律する機会を創造し、社会的弱者をうみだすことを予防する」
ビション:「ひとりひとりが自分をあきらめず、希望溢れる社会」

弊団体は上記のミッション及びビジョンを掲げ、主に通信制/定時制高校に通う生徒を対象に
事業を行っております。前提として、彼らは卒業後に進学/就職するも先天的要因によってもたらされた経済格差や社会的資本の欠如によって、状態的な「社会的弱者」になる傾向が強いという問題認識があります。

現在生まれてしまっている、年間自殺者3万人、ニートやフリーター、ひきこもりなどは社会に適合できなかったものとして捉えられがちですが、果たして本当にそうなのでしょうか。先天的要因によってうみだされてしまっているとすれば、現在の社会保証が彼らの未来を担保するには薄すぎる保証しかありません。多くの若者が「希望を持てない」と感じ続け、これからの社会もその停滞感が続くのであれば、私たちの社会はどうなってしまうのでしょうか。

私たちは卒業後に社会的弱者になってしまうという問題を解決するために、高校という教育段階において高校生への教育支援事業を行うことで問題を解決し、「希望の持てる社会」を創造したいと考えました。

事業の内容としては、通信制/定時制高校へ授業を行います。この授業を行う目的は「自律する力」を身につけてもらうことであり、この「自律する力」とは①自己問題解決能力を身につけること②卒業後の人的資本を身につけることを指します。この「自律する力」を身につけるために、高校生は1年間同じメンバーで弊団体の提供するプログラムを受けてもらいます。そして、そこには一般の社会人/大学生/経営者など様々な協力者ーが集います。そして、毎回のプログラムは年間を通して同じメンバーで運営されることによって「信頼ベース」の意見交換や悩み相談、協力者から失敗を学ぶ(擬似体験)、実際の自身の行動に移すなどの内容で授業を行っています。彼らは卒業後、プログラムにおいて知り合った協力者と恒久的なつながりを持ち続けることができます。

このプログラムを日本の通信制/定時制高校へ導入することによって、「社会的弱者」が生まれることを予防し、希望あふれる社会を創造します。

 

事業を始めたきっかけ

共同代表の今井と朴には、共通する「(社会から)否定された」という経験があります。社会には「否定しない」という姿勢や文化がないのではないか、と朴と今井は考えました。そのように考えるに至った背景として、今井と朴は大分県にあり、海外100カ国の生徒と日本の生徒が半分ずつの割合で構成されている立命館アジア太平洋大学(通称:APU)に通っていたことが大きく影響しています。実際、学年/性別/国籍で相手を否定し判断するのではなく、まずは相手の意思を尊重し話に耳を傾けるという姿勢がありました。そして、いわゆる「多様性」と呼ばれる環境において、年上/年下関係なく全ての人が教え/学ぶことが重要なのだと考えました。

当時は大学の1年生を中心に集め、「決して否定しないこと」を基本ルールにして「ユメブレスト」(ユメブレストとは、否定しないことをルールに目標ややりたいことを策定する集団発想法を用いたイベント)を開催しました。一人一人が持つ言葉の力を感じ、否定しないことでその人の可能性が広がっていくことを感じました。結果として、多くの1年生が言葉を重ねていくことによって実際的な行動へと映っていくことを朴と今井は実感しました。

そして今井が就職する事になり、偶然「ユメブレスト」を大阪(今井の居住地)で実施した所、多くの社会人から「会社では自分をみつめるこんな機会はなかった。刺激的だった。」という言葉を頂きました。一方、高校生/大学生からは「普段知ることのできない事や人に出会えて刺激的だった。」という言葉を頂きました。そこから10回以上にも及ぶ大阪でのユメブレストの実施、地方部(和歌山/奈良)でのユメブレストの実施していく中、参加した高校を卒業したばかりの浪人生の、「高校は極めて閉鎖的だから。高校の時にこういった場があれば自分はもっと変わっていた」という言葉がきっかけでやはりこういった姿勢、環境を教育の現場で普及したいと強く思い始めました。そこからD×Pがやりたいことを再考する必要が生まれ、同時にETICのソーシャルベンチャー・スタートアップメンバーとして選出されました。

朴自身が通信制高校出身だった事も有り、現在のコミュニティが分断されている状況に対して疑問を抱くようになりました。私たちが現場で目の当たりにする「格差」とは何なのか。先天的要因(経済格差/家庭環境)などによって、その後に持つ事が可能であった資源までも奪われてしまうのか。それを選ぶことは個人の自由だとしても、その部分を提供せずに予算だけを割り当て、「平等な教育機会」としてしまっているこの社会は何なのか。今井と朴は、激しい憤りを感じました。

では、そういった現場で多様性溢れる人々(社会人や大学生だけに限らず)と共に、その機会を
短期的な付き合いで提供するのではなく、長期的にお互いが関わっていくことで、本質的な資源を
得るプログラムを用意したい。そして、彼らが卒業後ある時に困難に直面したとしても、
プログラムでであったコンポーザー(協力者)に連絡を取ることができる、実際に事例を通して学び
実践した体験から困難を乗り越えることができる、と今井と朴は考えました。この仕組みが
社会に普及していけば、誰もが先生/生徒の関係を構築することができ、分断されてしまって
いるコミュニティが解消され、ニュースや新聞を賑わすようなあらゆる社会問題も解決される
のではないか。そう思い、今井と朴は2011年7月より高校へ本格的に参入することを決めました。

ひとことメッセージ

北海道出身で大学は九州だったのに、なぜか大阪でNPOを立ち上げることになってしまい、若干自分でも驚いています(笑)。まだ2年弱しか関西にはいませんが、縁を感じて関西で行動を始めていこうと思いました。

いずれは必ず和歌山や奈良、他の地方でも事業展開をしていきたいと考えています。というのは、明らかに今の日本は地方の若者たちの問題は実は大きく横たわって放置されているのにその解決に向けて事業を興している人間や伝えようとできる立場の人がいないからです。

東京からではなく、地方から今の日本の問題を見つめて、そして行動を起こしていく。まだまだ力不足であるし、勉強不足でもありますが、スタッフと共にこれからもがんばります。

 

活動レポート

現在のところ、活動レポートはありません。

【事業カテゴリ】
3期生就職・就労支援・キャリア教育教育・こどもの健全育成

【団体名/事業名】
NPO法人 D×P(法人化申請中)

【活動地域】
大阪、和歌山、奈良

【ウェブサイト】
http://www.dreampossibility.com

【ブログ】
http://yume-brainsto.jugem.jp/

【プロフィール】
1985年札幌生まれ。大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)2010年春卒。現在大阪の専門商社勤務。関西大学非常勤講師。フリーランスインタビュアー。
高校3年のときにイラク医療支援を目的とした任意団体を様々な大人たちと組織化し、代表を務めてイラクに渡航。しかし、ファルージャ近郊で武装勢力の人質となり、「イラク人質事件」の当事者となる。その後、4〜5年近く無気力に近い日々を過ごしたが、D×Pの共同代表である朴との出会いをきっかけに精神的に回復し始める。
卒業前にザンビアに渡り、そこで出会った青年たちと学校建設のプロジェクトに関わる。その現場で「日本の若者たちの方が問題」と感じて現在ではD×Pの活動をしている。

【影響を受けたもの】
APUの友人たち 祖母

【座右の銘】
どんなにつらい状況でも楽しく生きること

【オフの過ごし方】
海外&国内旅行 アニメや映画鑑賞 ライブ ジョギング 読書 音楽 カメラ 散歩 アート